北海道の冬季山岳遭難データの分析(2015年~2025年)

Posted on Mar 2, 2026
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Posted on Mar 2, 2026
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6年前、北海道警の冬季山岳遭難データを掘り下げ、明確な傾向を確認した。つまり、索道利用バックカントリー(通称サイドカントリー)がバックカントリー遭難の大半を占めていた。その後、COVID-19と円安は「誰が山に入っているのか」を大きく変えた。訪日旅行は一時的に落ち込み、その後に急回復した一方で、地元の参加者も増加した。2024/2025冬季は単一シーズンとして過去最大のバックカントリー遭難件数のスパイクを記録し、報道の見出しは即座に「外国人が80%」へと向かった。しかし、10年分のデータが示す実態はより複雑である。今回の分析では、索道利用バックカントリーと索道非利用バックカントリーを分けて整理し、実際に何が変わったのか、そして何が変わっていないのかを示す。さらに今回初めて、北海道におけるバックカントリー入山者数についての公式推計値の一部も取り入れる(英語版はこちら English here)。

著者の一言

北海道のバックカントリースキーにおける山岳救助には、新たな「当たり前」が定着しつつあります。バックカントリーにおける外国人遭難者の高い割合は、もはやクリックベイトではありません。外国人が関与する索道利用バックカントリーの遭難救助は過去最高水準に達しており、今シーズンも引き続き過去最多になる可能性が高い。そして、円安が続き、世界最高のパウダースノーが北海道にある限り、こうした新たな当たり前はスキー場周辺のホットスポットで、救助隊の時間とリソースを引き続き大きく消費していくでしょう。

一方で、索道を使わないバックカントリーは少し違う状況です。海外からのスキー登山者が目に見えて増えているにもかかわらず、索道非利用バックカントリーにおける遭難救助件数は急増していません。変わったのは積雪構造です。雪崩が遭難要因として大きな割合を占めるようになってきました。これは、6年前には必ずしもそうではありませんでした。

本投稿はデータを多用しており、読んでいて重く感じる部分もあります。しかし同時に、北海道の素晴らしいパウダースノーは適切な備え・知識・経験のもとで安全に楽しめることも、データから読み取れます。山を正しく知り、楽しみましょう。

Rob Thomson (トムソン・ロバート)
HokkaidoWilds.org編集長
北星学園大学国際学部グローバル・イノベーション学科 准教授

要旨

索道利用バックカントリー | 北海道におけるバックカントリー関連の山岳遭難件数の全体の78%を占める。索道利用バックカントリーでは、平均すると毎シーズン、外国人遭難者数が日本人遭難者数よりも60%多い。主因は道迷い

索道非利用バックカントリー | 索道利用バックカントリーと比べ、索道非利用バックカントリーの遭難件数は75%少ない。索道非利用バックカントリーでは、外国人よりも日本人の遭難者が多い傾向にある。主因は雪崩、転落、道迷い。索道非利用バックカントリーは、態様が深刻になりやすい。

その他の冬季山岳アクティビティ | 日本人の遭難者が多い傾向があり、主因は道迷いと転倒・転落である。

リスク推定 | 限定的ではあるが、公式のバックカントリー入山者データが新たに利用可能になったため、入山者一人当たりの遭難リスクの算出が可能になった。現在のバックカントリー入山者数統計にもとづけば、バックカントリーにおいて外国人遭難者の絶対的な件数が多いものの、外国人の遭難リスク自体が高いとは言い切れない

スキー場管理区域外に出るスキーヤーたち(ニセコアンヌプリスキー場)

エグゼクティブサマリー

ページ内リンク

インタラクティブな図やグラフを多数掲載していますので、見やすくするには、画面を横向きにして閲覧することをお勧めします

索道利用バックカントリー関連山岳遭難集計

スキー場からバックカントリーへアクセスした人の山岳遭難(索道利用バックカントリー、またはサイドカントリーと呼ばれる)から、データの分析を始める。

2025年冬の索道利用バックカントリーの外国人遭難者数は史上最多になる可能性がある

図1および図1aにおける2025年冬シーズンの数値は、2026年1月31日までのデータに基づく暫定値であり、シーズン終了(3月31日)までに約2か月残っている。バックカントリーでは1〜2月がピークシーズンであることを考えると、3月31日までに遭難件数が1月31日時点の約2倍に増える可能性がある。その場合、2024年冬シーズンに続き、外国人が関与する遭難事案数が過去最多となる可能性が十分考えられる。最近の報道では、2026年2月26日現在、外国人のバックカントリー遭難救助の遭難者数がすでに60人に達していると伝えられていますので、なおその可能性が高そうに見える。

※2025年冬の遭難見込み数の算出方法:2025/2026シーズンの11月1日〜1月31日の累計値と、例年この11月〜1月期間がシーズン全体の遭難(事案)数に占める「典型的な割合」を用いて推計した値である。下限推計は、1月31日時点でシーズン全体のうち比較的大きな割合がすでに発生している(前半に集中する)シーズンを想定している(第75パーセンタイル:平均すると、1月末までにシーズン合計の47%が発生している)。「シーズン前半に集中している」極端な例として、2018年冬シーズンの外国籍事案は、2019年1月末時点でシーズン合計の65%(23件中15件)がすでに記録されていた。上限推計は、1月31日時点ではシーズン全体のうち比較的小さな割合しか発生していない(後半に集中する)シーズンを想定している(第25パーセンタイル:平均すると、1月末時点でシーズン合計の32%しか発生していない)。例えば、2019年冬シーズンの外国籍事案は、2020年1月末時点でシーズン合計の25%(12件中3件)しか記録されていなかった。なお、典型的なシーズンでは、1月末までにシーズン合計の38%(中央値=第50パーセンタイル)が記録されるが、2024年冬シーズンはその一例である(1月末時点で51件中20件)。

※データに関する注意:2025年冬シーズンの遭難件数推計(第25・第75パーセンタイルを含む)は、過去10シーズン分の索道利用バックカントリー事案データ(うち外国籍は有効なシーズンが8シーズン)に基づくものである。標本数が限られるため、推計値はあくまで概算として、参考程度に極めて慎重に解釈されたい。

索道利用バックカントリー遭難はバックカントリー関連の山岳遭難救助出動の78%を占める

過去10年間に、バックカントリー関連の山岳遭難救助出動は404件あった。そのうち318件は、索道利用バックカントリー(サイドカントリー)で発生した遭難に関する出動である。全体のほぼ80%に相当する。

索道利用バックカントリースキーヤー(ニセコアンヌプリ山頂付近)

サイドカントリー遭難では、外国人が日本人より約60%多い

サイドカントリーでは、毎年、外国人の遭難者数が相対的に多い。平均すると冬季1シーズンあたり、外国人32人に対し日本人は20人であり、外国人遭難者は60%も多い(上の図1参照)。最近では、2024/2025冬季をめぐって「北海道のバックカントリー山岳遭難救助出動の80%は外国人」といった見出しが広く出回った。索道利用バックカントリーに限れば、この80%は不正確で、実際は85%である。さらに重要なのは、この割合が索道利用バックカントリーに限って当てはまる点である。索道非利用バックカントリーでは遭難者のdemographicsが逆転し、日本人の遭難が索道非利用バックカントリー遭難の75%を占め、外国人より多い(該当セクションへ移動)。

外国人と日本人で、索道利用バックカントリー入山者1人あたりの遭難リスク(遭難発生率)は同程度の可能性

索道利用バックカントリーでは遭難者の多くを外国人が占めるため、「外国人のほうが遭難しやすいのでは」と受け取られがちである。しかし、この点は入山者の国籍構成(そもそも誰がどれだけ入っているか)を踏まえないと判断できない。

2024/2025冬季、国土交通省 北海道運輸局はウェブカメラ映像を用い、北海道内の索道利用バックカントリー2地点(キロロ山頂ゴンドラ駅旭岳ロープウェイ山頂駅)および索道非利用バックカントリーの登山口4地点(羊蹄山 真狩登山口五色温泉登山口富良野岳登山口十勝岳・白銀荘)における入山者の属性を観測した。これら6地点はいずれも北海道で特に人気の高い地点である。

北海道運輸局の報告書(22ページ)では、2024/2025冬季にこれらの地点からバックカントリーへ入った人の80〜90%が外国人と推計している。もしこの推計が妥当であり、かつ同程度の国籍構成が他の索道利用バックカントリー地域にも概ね当てはまると仮定できるなら、2024/2025冬季の索道利用バックカントリー遭難者の国籍構成(外国人85%、日本人15%)は、入山者の国籍構成と大きく矛盾しない可能性がある。

運輸局の推計の中間値(外国人入山者が約85%)を暫定的に用いると、入山者あたりの相対リスク(日本国籍と外国籍の入山者を比べたときのリスク比)は約1.0(≈1.04)となり、索道利用バックカントリーにおける入山者1人あたりの遭難発生率(個人が遭難するリスク)は、外国人と日本人で同程度であることが示唆される。ただし、これは限られた地点の観測結果と、いくつかの仮定に基づく試算であり、確定的な結論ではない。

「発生率」の解釈について:ここで言う「遭難発生率」は、外国人と日本人を比較した時に、入山者1人あたりにどれくらい遭難が起きるか、という指標である。一方、「遭難者が出たときに、その遭難者が外国人である確率」は、外国人がどれくらい入山しているかに強く左右される。索道利用バックカントリーでは外国人入山者がそもそも多いと推定されるため、遭難者の国籍も外国人が多く見えやすいことが当然のことである(遭難者が出た場合、その遭難者が外国人である確率が高い)。しかし、それは直ちに「外国人のほうが遭難しやすい」ことを意味しない。ここでは、入山者1人あたりで見た国籍別の遭難発生率(遭難リスク)を比較している。

※データ解釈の注意:上記の試算は、キロロと旭岳で観測された入山者の国籍構成(外国人80〜90%)が、索道利用バックカントリー全体(例:ニセコアンヌプリ等)にも概ね当てはまる可能性がある、という仮定に依存している。実際には地点によって入山者の国籍構成や行動様式が異なる可能性があり、2地点の結果を北海道全域に一般化できるとは限らない。そのため、ここでの結論は暫定的な推定として慎重に解釈し、今後の入山者データの収集拡大と検証が必要である。

旭岳では索道利用バックカントリー入山者1万人あたり約9人が遭難する(可能性)

国土交通省 北海道運輸局の報告書は、バックカントリーへ入る人の属性推計だけでなく、上記の人気地点における2024/2025シーズンの入山者数についても、待望されていた入山者数の概数推計を提示している(報告書22ページ)。運輸局のプロジェクトは、ウェブカメラ画像を用い、2025年1月16日から2月20日まで(北海道バックカントリースキーの「ハイシーズン」)の入山者数を日別にカウントした。これらの入山者推計と、同シーズンの索道利用バックカントリーにおける山岳遭難データセット上の遭難者数を組み合わせれば、ごく粗い概算ではあるが、遭難発生率を見積もることができる。

2024/2025冬季の旭岳を例にする。山岳遭難データセットでは、1月1日から2月28日までに旭岳エリアで索道利用バックカントリー遭難者が10人(外国人8人、日本人2人)確認されている。運輸局の報告書は、ハイシーズン計測期間中の旭岳山頂駅からの入山者を1日あたり約206人と推計している。比較条件をそろえるため、入山者推計を同じ1月1日〜2月28日に拡張し、報告書の計測期間外の「ショルダー期」は1日あたり150人と仮定する。これらの仮定のもとでは、対象期間の旭岳は索道利用バックカントリー入山者1万人あたり約9人が遭難者となる(入山者10,869人中、遭難者10人)。

キロロについても同様に1月1日〜2月28日の枠組みを当てはめると、運輸局の入山者推計値は主要期間が1日あたり127人であり、ショルダー期は本稿の仮定として1日あたり100人とすると、およそ入山者1万人あたり3人程度となる。

入山者数のデータの重要性:このように、入山者数データはきわめて重要である。入山者数が把握できれば、地域・国間比較に加え、入山者属性別の遭難リスク推定も可能になる。今後の遭難防止対策に活用できる余地は大きい。そのため、今後も入山者数の推移を継続的に把握できるよう、入山者数データの収集・公開が進むことを期待したい。

Mt. Muine ski touring route (Hokkaido, Japan)
無意根山で索道非利用バックカントリー中の地図読み

「今どこにいるか分からない」

6年前の分析結果と同様に、索道利用バックカントリー遭難の主な原因は、遭難者の国籍を問わず「道迷い」である。これは、経験や装備が不十分な滑走者が、十分な事前の検討や計画をしないままスキー場からバックカントリーへ入り込んでいる可能性を示唆する。いわゆる「とりあえずトレースを追えば何とかなる」という心理である。

索道利用バックカントリー遭難では、外国人の負傷がやや多い

図3を見ると、索道利用バックカントリー遭難の多くは「無事」で終わるものの、過去10年のデータでは、外国人の遭難のほうが「負傷」を伴う割合がわずかに高い傾向がある。

この傾向は図2とも整合的である。図2では、外国人が関与する索道利用バックカントリー遭難の原因として「立木衝突」がやや多く見られ、負傷につながりやすい要因の一つになっている。

索道非利用バックカントリー 山岳遭難統計

次に、スキー場からバックカントリーへアクセスしていない(索道を利用していない)スキー・スノーボードに関する山岳遭難を見ていく。

索道非利用バックカントリー遭難は、索道利用バックカントリー遭難より大幅に少ない

図4でまず目につくのは、索道非利用バックカントリーにおける山岳遭難が、索道利用バックカントリーに比べて大幅に少ない点である。過去10年で、索道利用バックカントリーの救助対象となった人数は451人だったのに対し、索道非利用バックカントリーは118人にとどまる。

つまり、索道非利用バックカントリー遭難は相対的にまれであり、過去10年のバックカントリー遭難者数の約80%は索道利用バックカントリーが占めている。

索道非利用バックカントリー遭難は、日本人のほうが多い

図4から、索道非利用バックカントリーでは、どの冬季シーズンを見ても日本人の遭難者数が外国人の約2倍になる傾向が読み取れる。平均すると、索道非利用バックカントリーの遭難者数は、1シーズンあたり外国人が3人強であるのに対し、日本人は8人超である。ただし、外国人が関与する遭難も、年々じわじわ増えている。

ニセコ連峰縦走中の暴風(雷電山付近)

索道非利用バックカントリーでは、日本人が多く遭難しているからといって高リスクとは限らない

警察データでは、索道非利用バックカントリー遭難は外国人よりも日本人のほうが多く見える。一方で、前述の政府調査(羊蹄山・真狩、五色温泉、富良野岳、白銀荘の索道非利用の4登山口)では、当該地点からの入山者の80〜90%が外国人と推計されている。すると、「日本人はあまり行かないのに、遭難は日本人が大半だから、日本人は遭難しやすい」と結論づけたくなる。

しかし、この推論には落とし穴がある。政府調査の4登山口は、索道非利用バックカントリーの中でも特に利用が集中する“ホットスポット”であり、そこで見える入山者構成が、北海道全域の入山実態をそのまま代表しているとは限らない。

ここで重要なのが「どこで遭難しているか」である。2015〜2024年で見ると、日本人の索道非利用バックカントリー遭難は46の山に分散している(65件、以下の図4bに参照)。一方、外国人の索道非利用バックカントリー遭難は17の山に集中している(23件)。平たく言えば、日本人の遭難は地理的に広く散らばり、外国人の遭難は限られた場所に集まりやすい。つまり、日本人はホットスポット以外の山・入山口にも広く入っており、その分、政府調査の4登山口だけでは捉えきれない入山が相当数ある可能性が高い。

では、入山者構成の推計(80〜90%)が得られている4登山口周辺という「同じ地点条件」に限定するとどうなるか。2024/2025では、その周辺の遭難者数は極めて少なく、外国人3人、日本人1人(75%/25%)である。サンプルが小さすぎるため(n = 4)、傾向を断定することはできないが、この比率は「入山者の大半が外国人」という推計とかけ離れているわけでもない。

さらに過去にさかのぼっても、同じ4登山口周辺に限った国籍構成は、期間によって大きく変動する(いずれも件数は少ない)。

  • 2015–2019: 外国人23%(外国人3人/日本人10人)
  • 2020–2022: 外国人11%(外国人1人/日本人8人)
  • 2023–2024: 外国人62%(外国人8人/日本人5人)
  • 2024 alone: 外国人75%(外国人3人/日本人1人)

結論として、索道非利用バックカントリーでは、遭難者の国籍だけで「どちらが高リスクか」は判断できない。むしろ、各集団が「どこで滑っているか」「どれくらい入山しているか」を反映している可能性が高い。現時点で最も安全な解釈はシンプルで、入山者が多いほど遭難も増えるということだ。一人当たりの遭難リスクに関する主張には、同じ地点条件で対応づけられた入山者数データが必要である。

雪崩が顕著な遭難原因になってきた

6年前は、雪崩が原因となる山岳遭難救助はごく少数だった。しかし過去10年では、雪崩が関与する索道非利用バックカントリー遭難が目立つようになっている(図5)。

その中でも、索道非利用バックカントリーでは外国人の遭難自体は比較的少ないものの、外国人の遭難では雪崩が占める割合が相対的に大きい傾向がある。一方、日本人では「道迷い」が引き続き重要な原因として見られる。転倒・転落は、外国人・日本人のいずれにおいても同程度に多い原因である。

四日間の雪崩講習(AST2)のトレーニング(ホワイトルーム、ニセコ)

索道非利用バックカントリーでは、負傷・死亡の割合が高い

索道利用バックカントリー(上の図3)と索道非利用バックカントリー(下の図6)の態様を比べると、索道非利用バックカントリーのほうが、日本人・外国人いずれにおいても深刻な態様になりやすいことが分かる。索道非利用バックカントリーでは「負傷」が態様の約50%を占めるのに対し、索道利用バックカントリーでは概ね20〜30%程度にとどまる。

平たく言えば、索道非利用バックカントリーで何か起きた場合は、事態が深刻化しやすいようである。これは、索道非利用バックカントリーに入る滑走者の多くが比較的経験豊富で準備も整えている(北海道運輸局, 2025)一方で、軽微なトラブルは自力で解決されやすく、統計として「遭難」として把握されにくい可能性があることを反映しているとも考えられる。つまり、山岳遭難として記録されるのは、相対的に重大な遭難であることが多いと解釈できる。

冬季登山などの山岳遭難統計

最後に、その他の冬季の登山・トレッキング・山歩きに関する山岳遭難を見ていく。

スキー以外の冬季山岳活動では、日本人の遭難が多い

図7を見ると、スキー・スノーボード以外の冬季山岳活動では、北海道での山岳遭難は外国人よりも日本人が圧倒的に多い。

徳峻別山でピッケルとアイゼン

冬季登山では、日本人の遭難の主因は「道迷い」である

図8を見ると、索道利用バックカントリーや索道非利用バックカントリーと同様の傾向が確認できる。冬季登山などで日本人が遭難したケースでは、「道迷い」が救助要請につながる主要な原因となっている。一方、外国人のケースは件数が極めて少ないため、原因に関する推論はできない。

冬季登山などの遭難は、態様が深刻になりやすい

図9は、索道非利用バックカントリー遭難の態様と共通する傾向を示している。索道利用バックカントリー遭難と比べると、冬季登山などでは「負傷」や「死亡・行方不明」が相対的に多い。

バックカントリー遭難1件あたりの遭難者数

おまけとして、過去10年における「救助出動1件あたりの平均遭難者数」を示す。索道利用バックカントリーと索道非利用バックカントリーに分け、さらに国籍(日本人/外国人)別に整理している。
管理区域外の索道利用バックカントリースキーヤー(ニセコアンヌプリ)

索道利用バックカントリー遭難は、複数遭難者になりやすい

冒頭の概要でも触れたとおり、索道利用バックカントリー遭難では、救助出動1件あたりの遭難者が2人以上となる割合が24%である。これに対し、索道非利用バックカントリーは11%である。つまり、複数遭難者となるケースは、索道利用バックカントリーのほうが相対的に多い。

遭難者の滑走用具

もう一つのおまけ分析として、バックカントリー関連の山岳遭難における遭難者の滑走用具(スキー/スノーボード)を整理した。北海道警察の山岳遭難資料の「事案概要」欄を精査し、ほとんどの事案で滑走用具がスキーかスノーボードかが記載されていることを確認した。そこで、その記述にもとづき、遭難者をスキーヤー/スノーボーダーに分類した。

索道利用バックカントリー遭難はスノーボーダーに偏り、索道非利用バックカントリー遭難はスキーヤーに偏る

図11のとおり、索道利用バックカントリー遭難では、日本人の遭難者の過半数がスノーボーダー(61%)である。外国人については、索道利用バックカントリーではスノーボーダーとスキーヤーが概ね半々である。

一方、索道非利用バックカントリー遭難では、外国人・日本人ともにスキーヤーが遭難者の大半を占める。これは、索道非利用バックカントリーではスキー・ツアー装備で入山する層が中心になりやすいことを反映している可能性がある。

喜茂別岳山頂付近のホワイトアウト

スキー/スノーボード遭難者推移に明確な長期トレンドは見られない

図12のとおり、索道利用バックカントリー・索道非利用バックカントリーのいずれにおいても、過去10年の冬季シーズンを通して、スキーヤーとスノーボーダーの遭難者数に明確な増減トレンドは確認できない。

強いて「兆し」を挙げるなら、索道利用バックカントリーにおける日本人スノーボーダーの遭難者数が増えているようにも見える(図12の「国籍」フィルターで確認できる)。ただし、断定できるほど明確な傾向とは言いにくい。

バックカントリー遭難におけるガイド同行の有無

索道利用/非利用別に、10年間の冬シーズンのバックカントリー遭難におけるガイド同行の有無を見ていく。

 ガイド同行のバックカントリー遭難は極めて少ない

北海道警察が発表している山岳遭難状況の資料の中に、事案概要では、遭難事案ごとにその状況の詳細な情報が入っている。ガイド同行の事案がすべて「ガイド同行」として常に記録(記載)されているかどうかについては、現時点では北海道警に確認できていないが、ガイドツアーでの遭難として記録された事案はFig 13の通り。ガイド同行の遭難として記録された事案が極めて少ない。
Rausu-dake Southeast Couloir Ski Tour (Hokkaido, Japan)
羅臼岳(知床半島)の麓で悪天候を待つ

出動の対応機関

最後に、2015〜2025年の冬シーズンにおける北海道の山岳遭難救助で出動した機関および投入アセットの内訳を示す。

索道利用バックカントリーの救助出動はスキーパトロールの負担が大きい

下の図14でまず注目すべき点は、当然といえば当然だが、索道利用バックカントリーの遭難事案では、隣接するスキー場のスキーパトロールが大半の救助出動で初動対応(ファーストレスポンダー)となっていることである。これに対して、索道非利用バックカントリーの救助出動は、さまざまな機関が対応している。
Mt. Rishiri Classic Ski Route (Hokkaido, Japan()
利尻島の長官山での暴風

索道非利用バックカントリーの救助出動ではヘリの関与が多い

これもまた意外ではないが、北海道の索道非利用バックカントリーの遭難事案では航空アセットの投入が比較的多い。地上+航空の複合対応(地上部隊とヘリ等の併用)も、索道非利用バックカントリーのほうでより多く見られる。

データについて

北海道警察が非常に詳細な山岳遭難統計を一般公開していることに敬意を表したい。資料はすべて日本語のため、HokkaidoWilds.orgでは、北海道警察の山岳遭難状況PDFを定期的にデータベース化し、英訳を付し、Excel形式でも、データブラウザでも利用できるようにしている。OSFにおいても公開している

山岳遭難の分類
北海道警察は山岳遭難を大きく2つに分類している。

  1. バックカントリースキー遭難
    スキー、スノーボード等を目的として入山した個人(または複数人)に関する遭難である。2019年頃までは、さらにスキー登山遭難(索道非利用バックカントリー)とスキー遭難(索道利用バックカントリー)に区分されていたが、現在、北海道警察はこの2つの下位区分を用いていない。そのため当サイトでは、警察が掲載する事案概要を手がかりに、各事案を上記2区分(索道利用/索道非利用)へ独自に分類している。
  2. バックカントリースキー遭難以外の山岳遭難 – バックカントリースキー以外の山岳遭難全般を含む。夏季(登山、クライミング等)と冬季(冬季登山、アイスクライミング等)の両方が含まれる。本分析では、冬季の実のものを扱っている。

事案概要テキストに基づく内容カテゴリのコーディング

各事案に付されている事案概要(記述文)をもとに、以下の内容カテゴリについて独自にコーディングを行った。コーディングは、自動判定(ルールベース)に加え、人手およびAIによるチェックを組み合わせて実施した。自動判定では、概要文に含まれるキーワードをもとにExcelの数式でカテゴリを付与した(数式はこちら)。その後、ChatGPTにより、Excelの一次カテゴリー化結果と概要文の内容が一致していない可能性のあるコードを抽出(フラグ付け)し、最後にフラグが立ったものを人手で確認・修正した。
  • 行動区分
    • 索道利用バックカントリー
    • 索道非利用バックカントリー
    • その他の冬山登山
  • 使用装備
    • スキー
    • スノーボード
    • その他
  • 対応機関
    • 防災ヘリ
    • 消防ヘリ
    • 警察ヘリ
    • スキーパトロール
    • 警察山岳救助隊(地上)
    • 消防
    • 索道事業者(ロープウェイ職員等)
    • その他
注:本ページのデータは、公開されている北海道警察PDFをもとに忠実にに再構成したつもりのものである。大半は原資料と一致するが、一部に数値のズレが生じる可能性がある。もし不一致に気づいた場合は、ぜひ連絡してほしい。
入山前の計画を立てる索道非利用バックカントリースキーヤー

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北海道の冬季山岳遭難データの分析(2015年~2025年) Difficulty Rating

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Strenuousness

Vertical Gain

D

25

Time ascending

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0

Technicality

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0

Hazards

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0

Navigation

D

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GRADES range from A (very difficult) to D (easy). Hazards include exposure to avalanche and fall risk. More details here. Rating rubric adapted from Hokkaido Yukiyama Guidebook 北海道雪山ガイド.