北海道山岳遭難データを分析してみた(2014年~2019)

Posted on Feb 12, 2020
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北海道において、ほぼ毎年の冬に約70名前後の登山者が何らかの形で冬山で遭難している。結果的にその過半数の遭難者(おおよそ62%)が無事に下山され、負傷者が比較的に少ないが、数週間前に雪崩で2人の外国人スキーヤーに、今週は札幌市のスキーヤーが羊蹄山で亡くなり、絶望的な遭難事件も起こることがある。特にバックカントリースキーをしに国内外から北海道に滑りに来る訪問者が急増する中、そう言った事件はすぐに報道され、世間的に話題になる。こうしたことを背景に、私たちHokkaidoWilds.orgが非公式的にデータベース化した北海道警察遭難状況データをここで分析し、近年の冬山遭難傾向などを集計してみた(英語版はこちら)。

本分析のデータは北海道警察山岳遭難状況から読み取り、HokkaidoWilds.orgがデータベース化したデータである。

はじめに

著者について:トムソン・ロバート氏は札幌市にある北星学園大学の社会科学者。オールド・クリス氏はデータサイエンスの専門家。利用する北海道警察のデータだが、データは個人レベルで並べており、警察の集計PDFでも個人をベースとした遭難人数集計が報告されている。ただし、こちらでは主に外国人と日本人の比較をするため、死傷者の分析以外はあえて遭難者の個人データではなく、遭難事件数をベースに分析をしている。なぜなら、遭難事件の構成人数に関して言うと日本人と外国人とでは有意な差があるからだ。いずれにしても、件数ベースで集計しても個人ベースで集計しても、これから紹介する傾向はほぼ変わらない。見比べできるように、表示される集計図に「件数」「人数」の切り替えボタンを設けている。
※ページ下部にある「データについて」ではデータのダウンロード、定義などが書かれている。

要旨

スキー遭難:スキー場区域外から出て滑走中の「スキー遭難」に関しては、年々の遭難者伸び率が30%以上になっている。スキー遭難に比較的に多いのは外国人。遭難原因として、国籍を問わず道迷いが最多。スキー遭難で外国人の負傷者が多い

スキー登山遭難:登山口などから入山して、いわゆる「バックカントリースキー(スキー登山)」での遭難者は上記のスキー遭難者より少ない。スキー登山遭難者で比較的に多いのは日本人。日本人のスキー登山遭難では道迷いや悪天候という原因が多い。

その他山岳遭難(冬):この分類でも日本人遭難者が多い。道迷いが最多の原因。他の遭難形態よりも死者が突出的に多い

重要:冬山の入山者数のデータが存在しないため、「遭難率」を算出することができず、どのような入山者の遭難リスクが高いかを推定することが不可能。

目次

スキー遭難の集計

スキー遭難とは、「自力による登山行為を伴わずにリフト、ゴンドラ当で標高が高い山岳地に移動し、スキー場管理区域外をスキー、スノーボードで滑走中に遭難したもの」と言う(北海道警察、2020)。英語では通称「sidecountry サイドカントリー」と言うが、こちらも思いっきり「バックカントリスキー」の区分に入る。最も遭難件数の多いスキー遭難から集計を見て行こう。

 スキー遭難件数は年々平均30%以上増えている

遭難状況の詳しい個人レベルデータは過去5年間の分しか公開されていないが、国籍を問わずスキー遭難の件数が年々増えている(以下の図1に参照)。つまり、絶対的な数でいうと、スキー場から出て滑走する際中に遭難する人の数が増えている。

ただしこれが重要 → 今現在、遭難件数というデータだけでは、「遭難率」(スキー場から出て滑走する人の何割が遭難するか)を推定することが不可能である。つまり、遭難件数が確かに増加しているが、これは、遭難するリスクが高まっていたり、人々が益々危ないことをしている、という結論は全くできない。

逆に言えば、スキー場から出て滑走する人数の伸び率(増加の速さ)が遭難する人数の伸び率よりも大きいのであれば、それは逆に、サイドカントリーという行為がより安全になってきている、ということになる。

もちろん、遭難件数の伸び率がスキー場管理区域外に出て滑っている人数の伸び率より大きければ、これは大変な実態を指すことになる。ただし、上述のように、スキー場管理区域外に出るスキーヤーの数が把握できていないので、この辺りは何とも言えない。

 日本人スキー遭難件数よりも外国人スキー遭難件数が約25%多い

以下の図1によれば、件数でも、人数でも、外国人のスキー遭難者数が日本人遭難者数よりも多い。ただし、国籍を問わず、何人がスキー場区域外に出て滑走しているかというデータが存在しない限り、遭難リスクの高低について何も読み取ることができない。

「どこにいるかわからない」

以下の図2によると、国籍と関係なく、スキー場区域外に出て遭難する「スキー遭難」に関しては、遭難原因が最も多いのは「道迷い」。去年、HokkaidoWilds.orgのトムソン氏が北海道警察の山岳安全担当者と会って、近年の遭難傾向を伺ったところ、「スマートホンをGPSとして使えるということが知っていれば、遭難の90%ほどが起こらなかったのでは」と言われた。スキー遭難に関していうと、多くの場合は経験の少ないスキーヤーが下調べせずに区域外に出てしまっていることを示唆する結果となっている。 2020年の冬シーズンから導入される新ニセコルール(ビーコンやヘルメット着用の義務化IMG])がこの辺りの遭難にどのように影響するかが気になるところである。

 スキー遭難で怪我する外国人が多い

以下の図3によれば、多くのスキー遭難が「無事」で終わる。しかし、負傷する外国人の方が若干多いように読み取れる。上記の図2では、立木衝突を原因に外国人遭難が多いことを考えるとこの結果はそう不思議ではない。

スキー登山遭難の集計

北海道警察の分類では、スキー登山遭難とは「スキー場管理区域外の山岳地でスキーやスノーボードによる滑走を目的にリフト、ゴンドラ等を使用せず、自力による登山行為を伴う入山において、スキー登坂中又はスキー、スノーボードによる滑走中の遭難」という(北海道警察、2020)

 スキー登山遭難が圧倒的に少ない

以下の図4ですぐわかるのはスキー登山遭難が、スキー場区域外に出て遭難する事件よりも圧倒的に少ないことである。この傾向に関して警察に問い合わせたところ「スキー登山者の方がちゃんと装備を持っているという傾向がある」という見解であった。また、外国人スキー登山者に関して、遭難件数の増加は全く読み取れないのが興味深い。というのも、近年海外からのバックカントリースキーヤーがどうも急増しているようだが、その増加にもかかわらず、遭難件数がほぼ横ばいに推移しているということは、外国人が必ずしも北海道の冬山をなめて容易に入山しているわけではないことを語っているのではと思える。

 日本人スキー登山遭難者が多い

顕著に目立つのは去年(2018年)の日本国籍のスキー登山遭難件数である。2018年の冬シーズン(2018年11月~2019年3月末)には10件(16人)の日本人遭難があった。また、これらの遭難事件がシーズン中に均等に分布していて、場所もばらばらである(2018年冬シーズンの遭難はこちらで確認できる)。幸いなことに死者が出ていなかったようだが、2019年冬シーズンが気になるところだ。

 日本人スキー登山遭難に悪天候や道迷いが大きな原因

そもそもデータが少ないため、図5から何かを言うことが難しいが、上記のスキー遭難と同様、どうも日本人スキー登山遭難者にも道迷いが多いようだ。また、外国人スキー登山遭難に見受けない「悪天候」も、日本人スキー登山遭難者(個人)に多く見受ける(8人、22%)。

スキー登山で怪我して遭難する外国人が多い

以下の図6も、データが少ないため傾向が読み取りにくいが、どうも外国人の方がスキー登山で負傷して遭難することが比較的に多い可能性がある。

その他山岳遭難の集計

最後に、バックカントリースキー遭難(スキー遭難、スキー登山遭難)以外の山岳遭難の集計を見ておこう。

日本人の遭難者が多い

以下の図7では、外国人よりも日本人の方が「その他」の山岳遭難者に多い。ここも、入山者数のデータが存在しないため、「遭難率」を算出することができない。ただ単により多くの日本人がスキー以外の冬山の活動をしていることを示す集計になっている可能性が高い。ただし、この数年で遭難者数が減っている傾向にある。

 また道迷いか

図8に、その他山岳遭難の原因を集計してみた。やはりスキー遭難などと同じように、日本人遭難者で最も多くみられる原因が道迷い。外国人遭難者がごくわずかであるため、遭難原因の傾向が読み取れない。

 その他山岳遭難がより重大な帰結を伴う

ほぼ4分の1の「その他山岳遭難」が死亡/行方不明に至っている。国籍を問わず、この統計は一般の登山の「登頂主義」を語っているのか。すなわち、アイゼンやピッケルを利用した冬登山は、やはり厳しいアルパイン環境に身を置くのが基本であることに対して、スキー登山も、山頂に立ちたいという願望をもって入山する人も多いが、「いい斜面でいい雪を滑ればよくて、過酷な高山環境に行かなくてよい」というスキーヤーも多いように思える。

データについて

北海道内の山岳遭難状況に関して丁寧にテータを公開する北海道警察本部地域企画課に感謝です。英語話者も本データに参考できるように、HokkaidoWilds.orgは公開される遭難状況PDF()をデータベース化して、英訳して、検索やフィルタリングできるようにシステムを独自に開発しました。最新のデータをこちらからダウンロードできます:Excel (911kB)

注意:こちらで表示される集計数値が北海道警察山岳遭難状況報告書の数値と異なることがあります。それは、警察の報告書の具体的な個人レベルデータには分類(スキー遭難かスキー登山遭難かなど)が記載されていないからです。HokkaidoWilds.orgで各遭難事件の概要を読み、独自で分類をしているため、数値が若干ずれていることがあります。

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