前書き
2020年度はHokkaidoWilds.orgをウェブサイトとして立ち上げて丸々2年目になる。コロナ禍の様々な制約の中、早いペースで北海道のアウトドアに関する情報を発信し続けることができた。リックは、イギリスのロックダウンに拘束されつつ、以前北海道でハイクした登山ルートの概要を数多く執筆した。また、コロナウィルス感染防止対策を徹底しながら、ロブとヘイディは現地で道内のカヌールートとスキー登山ルートの取材をし続けた。一方クリスは日本に戻れず、シンガポール、ニュージーランド、スイスに行き来しながら、遠くからかわいそうに北海道が恋しくなっていたようだ。
また、Adventure Travel Trade AssociationのAdventure Travel World Summitが2021年9月に札幌市に開催される予定もあり、国、道、そして市町村が取り組んでいるアドベンチャートラベルの商品やサービス開発にも数件関わらせていただいた。
キーポイント
コロナウィルス
北海道では、感染防止対策を問わない不要不急外出自粛要請は2020年に一回しかなかったため、コロナウィルス感染防止対策を徹底しながら、比較的に自由に取材活動を続けることができた。
アウトリーチ活動
環境省/大雪山国立公園連絡協議会主催のシンポジウムでの講演や、北海道開発技術センターのワークショップでの話題提供など、いくつかの講演に呼ばれ、新聞などへの取材も受けた。
ウェブサイト機能
HokkaidoWilds.orgをより使いやすく、また適切な情報提示をはかるため、いくつかの新しい検索フィルター(例:スキー登山ルートの主な斜面方位)や、より詳しい難易度表示を導入した。
1年間のルート案内など(2020年4月1日~2021年3月31日)
スキー登山ルート
この1年で27本のスキー登山ルートの概要を公開した。去年と同様、その多くのルートは、すでに日本語で北海道雪山ガイドで出版されているルートであった。よりビッグマウンテン寄りのルートも触れ始めていて、そのハイライトはやはり芦別岳であった。夕張山地の雄大さや魅力を感じさせる山だった。
全てのスキー登山ルート: https://hokkaidowilds.org/skitour
夏登山ルート
2020年度も、リックが忙しそうに、以前北海道でハイクした登山ルートの23本の概要を執筆した。2020年の当初の予定として、リックは実家のノッティングハム市(イギリス)と北海道に行き来して北海道での取材活動を続ける予定だったが、国際渡航の規制やイギリスの厳しいロックダウンの影響で今年は北海道に渡航できなかった。2021年の夏あるいは冬シーズンに北海道に来れるのを祈っている。
(写真:Kaydi Pyette)
全ての登山ルート:https://hokkaidowilds.org/hike
カヌールート
「3年間で50本の道内カヌールートを取材」という目標に向けて、2020年は忙しかった。2020年の夏はその計画の2年目で、ヘイディとロブは19本のルートを取材することができ、ゴールまであとわずかに縮むことができた。多くの川を一緒にしたのはグレグとマリやタクとミボであった。ヌビナイ川の時に北海道ウィルダーネスカヌークラブの皆さまも大変お世話になった。
(写真:Shigeru Kobayashi)
全てのカヌールート:https://hokkaidowilds.org/water
他の投稿
グロバルな気候危機の最中にある今、HokkaidoWilds.orgの活動をできるだけ非炭素化しようと、その対策を探ってみた。その一つの探索として、真冬のスキー登山取材に100%電気自動車をレンタルして、北海道のアウトドアへのアクセスに電気自動車の可能性を探ってみた。結果的に、充電スポットも充実して、真冬でも電気自動車は使えるもんだと実感した。日本国内の現状だと比較的に格安で収容スペースの大きい日産リーフしか選択肢がないが、それでも問題なく使えた。ただ、北海道電力が作る電気があまりにも汚くて(つまり、火力発電所の二酸化炭素排出があまりにも多く)、北海道電力の将来の脱炭素計画を考慮しても、現状だと、ライフサイクルの温室効果ガス排出量を比較すれば、電気自動車は同様の大きさのハイブリッド自動車のライフサイクル排気量とギリギリしか下回らないことが分かった。北海道では、電気自動車を本当に気候にやさしい移動手段として実現ためには、泊原発を再駆動するか、もっと早いペースで再生エネルギーを取り入れる必要があると考えている。その詳しい分析やレポートはこちら:Post 1, Post 2, and Post 3.
ウェブサイト機能の追加
スキー登山ルートの難易度カテゴリー
HokkaidoWilds.orgに掲載されているスキー登山ルートの難易度について、ある良いフィードバックを受けた。それは、「初心者だったら、高い難易度=危険性が高いと解釈しない可能性がある」。つまり、難易度の表示の根拠はあまり透明ではないというフィードバックであった。そのため、北海道雪山ガイドの難易度カテゴリーをベースに、難易度ルーブリックを追加した。すべてのスキー登山ルートに既にアップデートしている。
検索フィルター:スキー登山ルート斜面方位フィルター
各スキー登山ルートに、山行中に接する主な斜面の方位を付け加えた。この方位の情報でルートを検索したり、フィルターしたりできるようにしたため、利用者が山行を計画するときに、方位の情報と共に雪崩情報や天気図などに参照しながら山行を計画することが可能になった。例えば、ある日のニセコエリアの雪崩情報によれば北東の斜面の危険性が高いことがわかれば、HokkaidoWilds.orgの斜面方位フィルターを使って、北東以外のルートをその日に検索して、危険性の高い斜面をさけるルートプラニングが比較的に容易になる。
社会活動
環境省/大雪山国立公園連絡協議会 大雪山国立公園ビジョン策定・協働型管理運営体制構築記念シンポジウム「みんなでつくる、世界を魅了する大雪山国立公園」(2021年3月18日)
シンポジウムの基調講演者として環境省に呼ばれた。国立公園の一般利用者がより積極的に国立公園の運営に参画できる方法を探るシンポジウムで、Youtubeでライブ配信された(詳細はこちら)。
他の講演
北海道の観光産業では、インバウンドのアドベンチャーツーリストに如何に北海道のアドベンチャーを伝えたらいいか、どのような商品を開発したらいいかが大きな課題になっている。HokkaidoWilds.org以外に、英語話者を対象に個人旅行者のためにアウトドア情報を発信するウェブサイトが少ないことが理由なのか、とても光栄なことに、多数の検討会やワークショップに参加させていただくことができた。
- 北海道開発技術センター「withコロナ時代のアウトドアツーリズムセミナー1」(2020年8月3日)
- 北海道開発技術センター「withコロナ時代のアウトドアツーリズムセミナー2」(2020年8月19日)
- 北海道開発技術センター「大雪山・十勝岳連峰の旅行商品造成事業ワークショップ2」(2020年9月16日)
- 中川町のアドベンチャーツーリズムを考えるプロガイドモニターツアー「意見交換会」(2020年11月2日)
アドバイザー役:大雪山グランドトラバース(2020年8月23日)|上記の、北海道のアウトドアの伝え方に関するプロジェクトだが、大雪山を縦走する6日間のモニターツアーに参加させたいただいた。途中で天気が崩れ、引き返さざるを得なかったが、大雪山国立公園の設備などについて意見を率直に伝えることができ、良い機会となった。
メディアでの出演
HokkaidoWilds.orgの活動や英語表記地形図作成などについていくつかのメディアに取り上げられた。
委員会の活動:北海道アウトドアフォーラム | 200名以上の北海道アウトドア産業の関係者が集う北海道アウトドアフォーラムは今年オンライン化されたが、ロブはフォーラムの専門員会の一人として関わった。フォーラムのトークセッションの進行役も務めた(Youtubeの収録はこちら).
将来の目標
将来の目標として、「2025年までに北海道の隅々まで、山スキールート150本、登山ルート120本、カヌーツーリングルート50本、自転車ツーリングルート120本の掲載」を目標としている。その半数以上を、一泊以上の本格的なアドベンチャーに値するルートにすることを目標にしている。以下は、その目標への進捗だ。スキー登山、夏登山、カヌールートはとても順調であることがわかる。
2025年の目標への進捗状況
ウェブへのアクセス統計
以下の通り、2020年度のHokkaidoWilds.orgへのアクセスが2019年度と比べて激減している。通常は1~2月に顕著なピークがみられるが、2020年度の冬シーズンも横倍。その理由として、あ)日本へのインバウンドの旅行者が99.9%減ったこと、い)日本に渡航できないことから、北海道の旅行情報を検索している人が極めて少ない、という2つの理由が主だと考えられる。ただし、HokkaidoWilds.orgのFacebookページやInstagramへのエンゲージメント(いいね率やコメント率)はむしょろ増加傾向にあるため、すでに北海道を知っているフォロワーの、北海道への興味関心がいまだに極めて高いことが読み取れるのではと解釈している。
チャンネル(ソース)別のアクセス数の推移
ソース別のアクセス割合
地域別のアクセス割合
地域別のアクセス(推移)
人気なページや投稿リスト
会計の概要
任意団体としてのHokkaidoWilds.orgには二つの「口座」がある。
1.ファウンデーション口座:「基金」に近い考え方だが、このファンドに入るお金の100%を、北海道の登山道整備、山岳安全、山岳教育などに取り組んでいるボランティア団体に寄付する方針である。このファンドに関する詳細なことはこちらをご覧ください(日本語版は作成中)。このファンドの財源は主にサイト内のアフィリエイトリンクからの収益。基本的な考え方としては、HokkaidoWilds.orgを通じて、北海道を尋ねる海外の登山者やスキーヤーなどが間接的に北海道のアウトドアの持続可能性に貢献できることである。今のところ、アマゾンアフィリアエイト、Explore-Share.comアフィリエイト、そしてAvenza Mapsの有料GeoPDF販売から収益を得ようとしている。
- 収益はないようだけど?今年も、HokkaidoWilds.orgが登録しているアフィリエイトプログラムからの収入はほんのわずかで、契約しているサイトからの払い出し額基準額にはまだ到達していない(数十ドルにしかなっていない)。一般的には、ウェブサイトから収益を得るのはとても難しい。HokkaidoWilds.orgはバナー広告などを張るつもりはないが、バナー広告を張っても収益を得るのがなかなか厳しい。ウェブサイトを通じて収益を挑戦したTim Moss氏がこの課題について書いているし、有名なウェブサイトbikepacking.comでさえ、ウェブサイトの収益化に苦労しているようだ。HokkaidoWilds.orgではサイト内のコンテンツを充実させると同時に、利用者の邪魔にならないように利用者が間接的に北海道のアウトドアの持続可能性に貢献できるように、Explore-Share.comなどとともに考えながら進めていきたいと思っている。
2.運用口座:本サイトの運用費用は主にロブに支払われたコンサル料、講演費などの間接的な収益からなっている(つまり、寄付)。現時点では、取材に関わる費用(燃料代、宿泊費、機材、高速道路料金など)はHokkaidoWilds.orgの著者などが自腹で払っている。したがって、運用口座にあるお金は主にウェブ費用(サーバー代など)や事務費に使っている。
ファウンデーション口座 | ||
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アフィリエイトリンク収入 | 0 | |
ファウンデーション収入合計 | 0 |
ファウンデーション口座支出 | ||
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ファウンデーション口座支出合計 | 0 |
運用口座 | ||
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収入 | ||
A) 前年度からの繰越額 | 202,069 | |
寄付(ロブに支払われたHokkaidoWilds.org関連のコンサル料、講演料、委員会謝礼など) | 365,550 | |
B) 収入合計(A+B) | 365,550 | |
支出 | ||
ウェブ運用費(プラグインライセンス料、サーバー料) | 96,243 | |
地図データダウンロード | 1,958 | |
諸費用(任意団体の印鑑作成) | 11,880 | |
備品(ズームレンズ交換) | 98,000 | |
C) 支出合計 | 208,081 | |
純資産(2021年3月31日現在) (A+B)-C | 359,538 |